調査ファイル⑦「定期テスト」(解決編)

事件編はこちら→https://sumifushiun.hatenablog.com/entry/2022/08/12/235904

〈前回のあらすじ〉

 テストの点数が低いって落ち込んでたメイちゃん。そこをエイくんが馬鹿にしたものの、メイちゃんは笑ってる。絶対傷付いてるはずなのに。オレ、住伏 暗(すみふし アン)はそれを証明しようと調査を開始。果たして…?

 

 2022年5月31日(火)、昼休み——…。

 

アン「さーてと、クラス全員に話聞いたけど…、どうしよっかなー。なーんか決定的な証拠ないと、あの人ほんとの気持ち話してくれないよなー」

 メイちゃんがエイくんのあれで傷ついてるってのは、間違いなさそうなんだけど…、本人が大丈夫って言って笑ってるからなー。

アン「んー、とりあえず、調査をがんばった自分へのご褒美に、ジュースでも買うか。えっと、自販機は…、食堂の横に1個あるはず。買いに行こ」

 調査は頭使うから。のど乾くんだよねー。

アン「にしても、どうしよっかなー。………、ん?」

 食堂の裏で、メイちゃんが地べたに座り込んでるのを見つけた。

メイ「……………」

アン「メイちゃん?なにやってんだろ、あんなとこで」

 地べたに体育座りで、突っ伏してる。さらに、人目のつかない校舎裏ってなると…、

アン「……、」

 

アン「なにやってんだ?キミ」

メイ「!、………、ぅ…アン…。どしたの?」

アン「それはこっちのセリフよ。こんな人目のつかないとこで、なにしてんのよ」

メイ「ぁ———…、ちょっと、ぅ…休憩…かな…?」

アン「休憩?そんなとこで…?」

 声が裏返ってる。泣いてたのね。

アン「ほれ」ぺっ

メイ「あっ…、ととと……、オレンジジュース?」

アン「ちょうど2本買ったとこだから。もらっときな」

メイ「オレンジジュースかぁ。コーヒーがよかったなー…」

アン「いや、生意気言ってんじゃねぇ!!(怒)」

メイ「——、ふふっ♪」

アン「高校生なんてまだ子どもなんだから。ジュースで我慢しな」

メイ「うん。わかった、これで我慢しとくよ♪」

 少しは本調子に戻ったかしら。……って、なに人の心配してんのよ、オレは…。

アン「それで、ほんとはなにしてたのよ、こんなとこで」

メイ「う——ん…、秘密♫」

アン「へ——、わかった」

 

メイ「……、ね、アンはなんで、いっつも真実にこだわるの?」

アン「んん?」

メイ「いや、なんでかなーって思ってさ…」

 真実にこだわる理由ね。

アン「なんでって…、逆に嘘偽りばっかの世界で、楽しいかい?」

メイ「え?」

アン「喜びも、怒りも、哀しみも、楽しみも、ぜーんぶ嘘の世界。そこじゃ何が本当か全くわからない。そんなの楽しいと思う?」

メイ「………、」

アン「それだったら、オレはほんとの方がいい。本音を隠してても、全部見つけ出して、絶対変わらない真実をつかんでやる。っていう感じかな…」

メイ「——、嘘の世界か…」

アン「まあ、周りにそうしろって言うわけじゃないけどね。オレの個人的な考えだから」

メイ「…それが、怖くて、辛くて、どうしようもないときは……?」

アン「まあ、本音を暴いた結果が今よりも悪くなるって場合は、考えるけど。でも、そういう例はあんまり見たことないよ、この『ハート探偵』っていうのやってて」

メイ「———…っ」

 ……。

 

 教室——…。

 

アン「エイくん」

エイ「!、アン、なんだ?」

 ……、

アン「メイちゃんが泣いてたよ」

エイ「!!、え……」

アン「校舎裏で一人で。まあ、オレが話しかけたら、普通を装ってたけど」

エイ「へ、へ——、……そ、それが…」

アン「誤解だったらそう言ってほしいけど、キミは理由に心当たりがあるんじゃないのか?」

エイ「……、——…」

アン「あるんだったら言ってくれ。あの人が嘘ついてるのは、見ていたくないから」

エイ「………っ」

 ………。

エイ「……、ある」

 …、やっぱりか。

エイ「アンの言ってた通りだよ。昨日のテスト返しのあれから、あの人、態度が変になって…。気づいてたんだ…。気づいてたけど…、オレ……」

アン「うん。ま、重要なのは、こっからどうするか。それで、その態度の変化ってのは?」

エイ「なんか…、静かになった感じで……話しかけても暗くて…」

 エイくんに対して暗くってことは、やっぱり…、だとしたら……、

アン「ね、あの人、もしかしてさ…、」

エイ「?、なんだ?」

アン「昨日のあれ以来、キミの名前を呼ばなくなったんじゃない?」

エイ「!!、——、…、そういえば…そうだ、呼ばれてない…」

アン「それまでは頻繁に呼ばれてた?」

エイ「…、うん。ほぼ毎回だから、よく覚えてる…」

アン「昨日のあれ以降何回話した?」

エイ「え…、1回だけど…、グループワーク一緒だったから、めっちゃ話した…」

アン「よし!そういうことなら、………、」

 

 ——結構がんばったんだけどな……。なんか…、全然上手くいかないな……♪

 ——まあ、テスト、そこそこがんばってたし…、ま、多少へこんでるかもだけど、

——ぐで———————!!

 ——静かになった感じで……話しかけても暗くて…。——そういえば…そうだ、呼ばれてない…。

 ——あんときのオレみたいに、気にしてなかったらいいけど。

——………、たまにはそうしなきゃいけないんだよ♪

 ——『大丈夫だよ』って言うばっかで、全然怒ったりしてくれなくて…。

 ——それこそ、嘘なんじゃないの?ほんとはぜーんぜん許してなかったりして?

 

 ——………—————、……もーなにそれ、わたしの真似?笑

 ——…それが、怖くて、辛くて、どうしようもないときは……?

 

アン「……、やっと…、やっと出てきた……真実のしっぽ……!」

エイ「なっ…、本音がわかったんか…?」

アン「ああ、だいたいね。情報提供、感謝する」

 よし、ここまで来たんなら、あとはお得意の…、

アン「学級会を開こう」

 さあ…、行くよ。

 

司会「起立!これより、学級会を始めます!」

みんな「おねがいします!」

 

  〈推理〉

 

司会「起立!これより、学級会を始めます!」

みんな「おねがいします!」

 

 学級会が始まった。

司会「えー、今回の議題は、球本くんが櫻花さんをからかったことについてです」

 ざわざわ…。メイちゃん…。

メイ「もう、結局学級会なんか開いて…」

アン「まあまあ、文句は学級会の後にしてよ」

メイ「わたし、なんにも隠してないって…」

アン「うーん、どうかなそれは」

 司会の人から事件についておさらいしてもらって…。今回の議題は、それでメイちゃんがどう思ってるか。だね。

司会「以上が、今回の事件のおさらいになります。それでは、何か意見はありますか?」

アン「あ、はい、それだったら、 レイナ「それだったら…!」

 !、レイナさん?

レイナ「それだったら球本くん…メイちゃんに謝ってよ!メイちゃん、絶対そのこと気にしてるんだから!!」

エイ「—、………!!」

レイナ「メイちゃん…、昨日あの後話したら、なんかしんどそうだったし……!!球本くんのそれのせいだよ、絶対…!!」

 ———…。

レイナ「…だってメイちゃん、テストのことで落ち込んでたし…!」

メイ「ま、待って、レイナちゃん!わたしなら大丈夫だから…」

アン「そう。まだエイくんのそれを気にしてるって決まったわけじゃない。確信のないまま叩くのはやめな」

レイナ「で…でも……!!」

アン「今から、オレが推理した『メイちゃんの心』を聞かせるから。もしそれが当たってたら、メイちゃん、キミはちゃんと認めてよ?」

メイ「———……、うん」

 

アン「じゃあ…、始めよっか♪まず、オレは、テストの点数が低いってへこんでるメイちゃんの様子を見てる。だから、エイくんに馬鹿にされて笑ってるとき、それを不自然に思った。①テストの点数が低くて落ち込んでるのと、②それを馬鹿にされて笑ってるのは、矛盾してるからね。

 キミが返事をするまでには変に間があったし、おそらく、馬鹿にされて傷ついてるって推測できた。でも、証拠がなかった。だから、クラスのみんなに話を聞いて、情報を集めた」

メイ「———、」

アン「まず、1つ目のポイントは、キミがテストの点が低くてへこんでるのは本当かってこと。これに関しては、オレは嘘は感じられなかったし、他にも何人かの人(ユリさんとか)も、そう感じてるみたいよ。ここから、①テストの点数が低くて落ち込んでるのは、本当だと推測できる。よって、①と矛盾してる②エイくんに馬鹿にされて笑ってるってのは、嘘ってことになる」

メイ「———…」

アン「次に、2つ目のポイントは、キミのエイくんへの態度の変化。これに関しては、さっきエイくんに聞いたら、話してくれた。自分が馬鹿にしたときから、メイちゃんの自分への態度が変わったって。具体的には、からかう前よりも静かに、話しかけても暗い感じになった。そして……、エイくんの名前を呼ばなくなった

メイ「あ…!」

アン「どうやら、自分でも心当たりはあるみたいね。そう、名前を呼ぶってのは、自分から相手との距離を縮めるコミュニケーションの方法。それを使うのは、たいてい自分が気を許してる相手のみ。メイちゃんは、普段からよく呼ぶタイプだよね。

 エイくんの証言だと、いつもの会話ではほぼ毎回呼んでるのが、昨日の事件以降は、グループワークでいっぱい話してるのに一回も呼んでない。だからなおさら、呼ばなくなったことに対して、エイくんは違和感を持ったんだ。それが、キミがエイくんに壁を作ってるっていう証拠」

メイ「あ…、待って…そんなこと……!」

アン「そして、3つ目のポイント。以前、カスミさんが試験管を割って、それをメイちゃんのせいにしたことがあったよね。あのとき、謝るカスミさんに対して、キミは大丈夫だよって言うだけで、全然キレたりとかしなかった。これは、相手を気遣う優しさとも取れるけど、……裏返して見れば。これは、謝る相手に対して1ミリも嫌がる本音を見せず、本当の気持ちを一切わからなくする、ある意味一番の裁きとも取れる。

 キミが傷ついてる気持ちを隠す性格なら、今回だって、『大丈夫』って言ってるのはかなり怪しくなってくるよ。さあ、これでもまだ『大丈夫』って言いきれるんだったら、言いきってみなよ」

メイ「………」

 ………、

アン「と、こんだけ言ったら、そろそろ認めてくれるかな?『大丈夫』じゃないって」

みんな「………」

メイ「……………、」

アン「そろそろ言ってよ、キミの本音。はじめて会ったときから、ずっとわからないままだよ」

 

 ——どこ中って?

 ——うん!

 ——はぁー、まったく、そんなこと聞いてどうするつもり?

 ——えー、だって気になるんだもん!

 ——もー、しょーもない嘘ついちゃって、まったく…。

 ——いやいや、嘘じゃないよ!ほんとほんと!

 

アン「………」

メイ「———……、」

 ………。

メイ「わ…わたしなら、大丈夫だよ…?♪」

アン「……、嘘でしょ?」

メイ「な、なんで…!気にしてないよ、わたし…、なんか…言われたことも、気にしてないから……♫」

アン「今、決定的な証拠が出た。気にしてないって言うんだったら…、」

 ほんとに馬鹿にされて傷ついてないって言うんだったら…、

 

アン「なんで今にも泣き出しそうな顔になってんのよ!」

 ↓

メイ「——っ!、…え……?」

 

アン「さっきまでの推理は、可能性の話にすぎなかった。でも、ここまで出たら、もう逃げきれないよね?」

 ……………、

メイ「……ぁ…、…ぃや……」

 

エイ「もうやめてくれ、櫻花さん!!」

 !、ざわっ…!

 

メイ「——!、…」

エイ「オレが……オレが悪かった…!!もう……もうやめてくれ!!大丈夫って言われるのは、もう怖いんだよ…!!ほんとはなんて思ってんだよ………!!もう、嘘つかなくていいから全部言ってくれ…!!なんとでも言っていいからよぉ…!!」

 

メイ「—————……、」

レイナ「メイちゃん…」

 !

 

メイ「………ぅ……ぅう……———、」

 

レイナ「うん…!」

メイ「——、—、——……う…ぅぅ…うえええええぇぇぇぇえぇぇぇぇぇん………!!」

レイナ「……!、うん…、うん……!!」

ユリ「大丈夫大丈夫」

メイ「ぅん…。………うぅ……こわかったし…はずかったぁ……、ぁんなとこまねされて…ううぅぇぇぇん………!!」

レイナ「うん…!大丈夫、そんなのバカにしないから…」

女子「そうそう」 女子「大丈夫だよ!」

メイ「ぅう……、うん…!………ぅ…ぅぅうううええぇん……」

 

 ………、

 

 ♥→♡

 ♪

 

 翌日、6月1日(水)——…。

 

 ………、?

メイ「ぅぐで—————……」

 あ、あれー…、また…?

アン「な、なに、また落ち込んでるの?」

メイ「…、今度は現代文の点数が低くて…」

 

みんな(いや…、どんだけ落ち込むんだよ…(汗))