調査ファイル⑦「定期テスト」(事件編)

 1年空組座席表

霧道 文永
(むどう フミ)
菱本 鎌
(ひしもと レン)
気田 広陽
(きだ コウヨウ)
五星 桜
(いつほし サクラ)
澄江 晴香
(すみのえ ハルカ)
 
空見 律花
(そらみ リツカ)
真瀬 亜希
(まなせ アキ)
鋼 勇斗
(はがね ユウト)
球本 鋭
(たまもと エイ)
友寄 励奈
(ともより レイナ)
長谷川 恵美
(はせがわ エミ)
突山 斗希
(つきやま トキ)
宮上 穂花
(みやがみ ホノカ)
羽根元 甲斐
(はねもと カイ)
弦川 鳴
(つるかわ ナル)
望波 美輪
(もなみ ミワ)
転尾 秀
(ころび シュウ)
音雨 京
(おとめ キョウ)
角永 慧
(すみなが ケイ)
添橋 光
(そえはし コウ)
二芽 蒼
(ふため ソウ)
果苗 流那
(かなえ ルナ)
籠 闘条
(かご トウジョウ)
水会 霞
(みずえ カスミ)
一原 未来
(いちはら ミク)
遠道 海斗
(とおみち カイト)
道仲 奏
(みちなか カナデ)
弓川 色翔
(ゆみかわ イロト)
包咲 果瑠
(つつざき ハル)
城翔 璃穏
(じょうしょう リオン)
相原 星
(あいはら セイ)
刻花 党香
(こくばな トウカ)
響 美音
(ひびき ミオ)
砂守 実花
(すなもり ミカ)
一道 心
(かずみち シン)
住伏 暗
(すみふし アン)
櫻花 明
(さくらか メイ)
切本 結理
(きりもと ユリ)
幻中 千華
(まぼなか チカ)
打風 里代
(うちかぜ リヨ)
風岡 舞
(かぜおか マイ)

 

 2022年5月30日(月)、昼休み——…。

 

メイ「—————、ぐでぇ……」

アン「…、どしたの?そんな落ち込んだ感じで」

 オレ、住伏 暗(すみふし アン)。スミに突っ伏してる暗いヤツって書いて、住伏 暗(すみふし アン)。葉後高校(はあとこうこう)の1年空組に通ってます。人呼んで『ハート探偵』。まあ、そんな呼び名がついてる理由はまた後で。

メイ「ぐでで…、ぐで……」

 この人は櫻花 明(さくらか メイ)さん。オレの隣の席で、オレを最初にハート探偵って呼び出した人。いっつもハイテンションでぎゃーぎゃー言ってるんだけど…、今日は妙にテンション低いな。なんかあったのかしら。

アン「どしたの?100円落とした?」

メイ「——、ちがう…」

アン「じゃあ、朝飯食うの忘れてきた?」

メイ「いや…、ちゃんと食べてきたよ……」

アン「じゃ、どしたの?なんか、ずいぶんと落ち込んでるみたいだけど…」

メイ「——、今日さ、テスト返ってきたじゃん…」

アン「テスト?……、ああ。そういや、返ってきたっけ」

 先週定期テストがあって、今日そのうちの何個かが返ってきたんだっけ。

メイ「英表の点数が低かったの…」

アン「へー、それで、何点だったの?」

メイ「これ……」

 英表の答案を見せてきた。この点数は……、

アン「あ——、普通かな。べつに低くもないけど、かと言って、めちゃくちゃ高いわけでもない。けど、そんな気にするほど?」

メイ「うーん、べつに気にしてないけど…」

アン「いやじゃあ、いつものバカ高いテンションはどうしたのよ」

メイ「え、いっつもそんなに高いっけ…?」

アン「まあ、学生にとって、ステータスは成績で決められるもんね。オレも体育でよう馬鹿にされてたから、その気持ちはわかるけど」

 勉強と運動でまず分かれる。勉強は定期テストとか、授業で当てられるので決まる。運動に関しては、実技テストもだけど、その前にサッカーとかバスケとかの授業でバレる。

アン「ま、あれだ。そうやってへこんでる暇に参考書の1ページでも開いとけってことなんじゃないの?そんなにテスト好きなんだったらだけど」

メイ「いやいや、勉強してこれだからへこんでるんだよ…」

アン「ああ、やっぱりへこんでるのね」

メイ「えー、だって、結構勉強したんだよ?こう見えて」

 テストなんてそんなに感情使うもんかね?まして1年の一発目なんて、そんな重要なものでもなさそうだけどね。まあ、それでも使っちゃうんだから、しょうがないけど。

 いやでも…、勉強にそんな熱心になるなんて、わかんねぇな———………(汗)。

 

  〈事件〉

 

 5時間目、別の教科のテスト返し——…。

 

メイ「アン、何点だった?」

アン「え、なんでキミに見せなきゃなんないの?」

メイ「アンは点数高そう…。放課後よく残って勉強してるし」

アン「別に普通の点数。普通の勉強をしたから」

メイ「うん。すごいよね♪いっつもまじめに授業受けてるし、よう勉強もしてるし、すごいよね、アンは♫」

 ———…、

アン「……いや。見てから言いなさいって、それ。別にそんなに高い点じゃないわよ?」

メイ「え?じゃ、見ていいんだね、あ、高いじゃん!」

アン「アホ!なんで見てんのよ!!」

メイ「だって、見てからって言ったもん」

アン「そういうことじゃなくて!そもそも見るなって言ってんの!だから、すごい云々も言わないってこと!はぁー、もう最悪…。どうせ100点取ってる人もいるってのにさぁ、そうやってすごいって言われると反応に困るんだけど……」

メイ「え、でも、高いもん。すごい…」

アン「…、それで?キミはどうだったの?」

 さっきは落ち込んでたけど、今回はどうだろ?

メイ「うーん、…あんまりダメだね」

アン「ふーん」

メイ「これも結構がんばったんだけどな……。上手くいかないよね笑、こういうのって」

アン「んー、まあそりゃ、努力と結果は直結しないものだから…」

メイ「んー、でも……さっきの英表もダメだったし…、なんか…、全然上手くいかないな……♪」

 ………。

 

エイ「ぐで———————!!」

 

 ———っ!?

 急に男子が叫んだ。あれは…、球本 鋭(たまもと エイ)くんか。

 

 ——ぐでで…、ぐで……。

 

 メイちゃんの真似して馬鹿にしてるのに、クラスのみんなも気付いたみたい。教室の空気がビリッとしてる。

 ………。

 エイくんがにやにやして、メイちゃんの方を見てる。あー、やばいぞー、これ…。

 ………、

メイ「………—————、……もーなにそれ、わたしの真似?笑」

 !

エイ「おー、そうそう!ぐで——っ!!」

メイ「———笑」

 ほっ…。びびった…。一瞬完全にやばい空気になったけど…。

 っていう感じの空気に教室はなってるけど、みんな気づいてないな。たしかに、いつものように笑ってはいるけど……、

 メイちゃん、いつもとちがうよね?

 

 放課後——…。

 

ユリ「でさー、それでさー、」

メイ「え、マジで?そんなことあるー?」

 メイちゃんは普通に過ごしてるけど…、隠してることあるよね。それを確かめなきゃ。

ユリ「じゃ、うち部活行ってくるねー」

メイ「うん!がんばってね」

 よしっ、やっと一人になったなー。

アン「ね、聞きたいことあるんだけど」

メイ「ん?アン。なに?」

 こういうのは、無駄なごまかしとかは抜きで…、

アン「さっき、エイくんに馬鹿にされてたけど、楽しかった?」

メイ「!、———、…え?」

 ——ぐで———————!!

アン「ま、あえて説明しないけど。思いっきり馬鹿にされてたよね。ましてあれは、テストが全然ダメだったって、へこんでるキミの反応を真似して面白がってるんだから、極めて質が悪いし、キミは平常心を保ってはいられなかったはずだけど」

メイ「あ、いや、そんなことないよ、べつに笑…。普通に平常心だから。大丈夫大丈夫笑」

アン「いや、馬鹿にされた後のキミの返事。声を出すまでに時間がかかってたでしょ?あれはおそらく、馬鹿にされたことに対して動揺してる分の間。直前まで、テストのことで上手くいかないって嘆いてた人が、そのテストのことで馬鹿にされたのに笑ってるっていうのは、変だよね?」

メイ「え…、わたし、笑ったりしてた…?べつに変なんかじゃないけど…、あ、わたしも部活行かなきゃ笑。じゃね、アン」

 ……、逃げようとするってことは、やっぱり…、

アン「……、楽しくもないのに笑うなんて、本気で思ってるの?」

メイ「………、たまにはそうしなきゃいけないんだよ♪」

 ———、笑ってるのに、悲しそうだったな、今の。

 ①テストの点数が低くて落ち込む。対して、

 ②それを馬鹿にされて笑ってる。

 この二つは明らかに矛盾してるよね。ってことはどっちかは嘘ってことになる。①に関しては、そんな嘘つく理由がない。②に関しては、嘘で笑ってその場をしのぐって目的が想像できる。でも、そんなことして、なんの意味があるんだろ。なんの真実もつかめないのに。

 

  〈調査〉

 

 今回真実をつかめるかどうかは、あの人の本音にかかってくる。テストの点が低くて、落ち込んでて、そこでそのへこんでる反応を真似されて、それに対してあの態度。

 ——ぐで———————!!

 ——………—————、……もーなにそれ、わたしの真似?笑

 あの返事するまでの不自然な間。そして、テストのことでの落ち込み具合を考えると、おそらくメイちゃんは、あのものまねによって傷ついた。でも、本人にそれを言っても、本人はそれを認めなかった。この推理にはまだ決定的な証拠がない。そもそも、この推理が合ってるかもわかんないし、それを確かめるためにも全部調べなきゃ。事件のこと、メイちゃんのこと、エイくんのこと。ぜーんぶ調べるために、クラスみんなに聞き込み調査をする。全員の話を聞いて、手がかりを探すのだ。

 

 〈調査 エイ〉

 クラスメイトの人たちへの聞き込み調査、まずは、馬鹿にしてた本人、エイくんから。

アン「ね、エイくん?」

エイ「お、ハート探偵wまたなんか調べとんか?」

アン「そーなんだよーw実はさ…、メイちゃんのこと調べてるんだけど、なにか知らないかな」

エイ「!?」

アン「メイちゃんがどんな人かとか、こんなことあったとか、なんかない?」

エイ「あ、ああー、櫻花さんね。さあ…、なんも知らんなー……」

 この反応、おそらく自覚はしてるっぽいね。

アン「ふーん、じゃあさ、さっき『ぐで———————!!』って言ってた、あれはどういう意図で?」

エイ「!!」

アン「あれ、メイちゃんがテストの点数低くてへこんでるのを、真似したんだよね。叫んだ後メイちゃんの方見てたし。あれはどういう意図だったの?」

エイ「そ…それは…、自分も点数低かったから、それで、やってみようって思ってさ…」

アン「へー、何点だったの?」

エイ「ほら、これ」

アン「あー、たしかに低いな」

エイ「だろw」

アン「もっと勉強した方がいいんじゃないの?」

エイ「あー、そうだよなw、——……」

 ………。

 

 〈調査 ユリ〉

ユリ「あー、たしかに点数低いって、落ち込んでたよ」

アン「やっぱり。ユリさんにも言ってたんだね、それ」

ユリ「うん。まあでも、そんなに低くもないけどね」

アン「落ち込んでたのは、本音っぽい?」

ユリ「んー、まあ、そこそこ…かな」

 まあ、そこに関しては、オレは嘘は感じなかったから、本音だと思うけど。

ユリ「んー、まあ、テスト、そこそこがんばってたし…、ま、多少へこんでるかもだけど、でも、そんな心配するほどじゃないと思うわよw」

アン「……、ああ、そうね」

 

 〈調査 リオン、セイ〉

リオン「櫻花さんがどんな人かかー。うーん、なんか、元気な人だなーとは思うけど…、それぐらいかな。思うのは」

アン「えー、そんだけー?もう、使えないんだから…」

リオン「だーかーらっ!使えないはやめろって」

セイ「ただ、オレのときみたいじゃなかったらいいけどなぁ…」

リオン「!、オレのときみたいにって?」

アン「あれだもんね、セイくん、前にエイくんたちに馬鹿にされてたもんね」

 ここに入学したばっかのときに起きた事件の話。あの事件大変だったなー。

セイ「あんときのオレみたいに、気にしてなかったらいいけど」

リオン「あー、セイちゃん、なんか言われてたもんな…」

 ……、

アン「セイくんの方は、もう馬鹿にはされてないの?」

セイ「うん。一切しゃべってない」

リオン「まあ、そうなるわなw」

 

 〈調査 カスミ、ミク〉

カスミ「前にわたし、実験の授業で試験管割ったの、メイちゃんのせいにしたことあったじゃない?」

ミク「あったね。めっちゃダサかったもん、あんときのキミw」

カスミ「わざわざ言わなくていいって…(汗)」

 これも前にあった事件の話。カスミさんがメイちゃんに罪を着せて、でも結局バレたのよね。

アン「で、それがどしたの?」

カスミ「あのとき、メイちゃんは『大丈夫だよ』って言うばっかで、全然怒ったりしてくれなくて…。それが逆に怖かったな。ほんとはなんて思ってるか、わかんなかったから」

ミク「それこそ、嘘なんじゃないの?ほんとはぜーんぜん許してなかったりして?」

カスミ「うん、そうかも…。だから、球本くんにからかわれてたあれも、笑ってるのは嘘で、ほんとは気にしてるんじゃないかなって」

 たしかに、カスミさんのときも、バレて謝るカスミさんに対して、笑ってた。だったら、今回もその可能性はある。

アン「うん。わかったよ。またなんかあったら聞くかも」

ミク「うん。うちらも気にしとくよ」

カスミ「うん!」

 

 〈調査 レイナ、エミ、ミワ、ルナ〉

レイナ「あ、それならわたしも気になって、メイちゃんと話してみた」

アン「え、ほんと?」

エミ「え、なぁーにそれ、聞いてないんだけど?」

ミワ「ままま。で、どんな話したの?」

レイナ「いやでも、普通のしょーもない会話しかしてないよ。だって、球本に言われてたこととか、そんな聞けないもん…(汗)」

アン「んん。しっかし、レイナさんも気が利くのねぇ。わざわざ気にかけて、話しかけてあげるなんて」

 しかも、込み入った話はあえて避けて、しょーもない世間話をするとは、かなり気が回る人みたいだな。

レイナ「うん。だって、メイちゃんは…わたしが本音言えなくて、悩んでたときに、助けてくれたもん」

 ——わたし的には、仲直りしてほしいな…。わたしはそれができなかったから。ちゃんと謝ったら、多分ダメだったとしても忘れないと思うから。

レイナ「いい子だよ、メイちゃん」

ミワ「…、うん」

ルナ「たしかに、その感じはわかる」

エミ「わたしも助けてもらったからなぁ…。いい子だよね。周りが笑顔になっちゃう…」

 ———。

 

 〈調査 キョウ〉

キョウ「もしほんとに傷ついてるとしたら、櫻花さん自身がそれを認めないと、証明できないよ」

アン「わかってるって。けど…ふふふ…」

キョウ「!、なにがおかしいんだい?」

アン「いやー、……ずいぶんと好かれてると思ってさ」

キョウ「ああー。それなら、うちもわかるよ」

アン「でしょ?」

 

 なんか、こうやっていろんな人から話聞いてると、メイちゃんはいろんな人から好かれてるんだなーって。ここには書いてないけど、他にもいろんな人が気にかけてくれてた。メイちゃんに読んでほしいなー、この調査ファイル。馬鹿にされたこととか、どうでもよくなると思うから。

 

アン「とにかく、真実は必ずつかむよ。まして、今回の相手はあの人だから。負けらんないわ」

キョウ「うん…!」

 

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